辺見庸『もの食う人びと』→ 私の旅の食体験

辺見庸『もの食う人びと』
普通の旅では味わえない食体験のルポルタージュ。
今日初めて櫻井翔の愛読書だと知った。
誰が読んでも面白い本なので、是非ご一読いただきたい。中古だと著者に印税が入らないので、新品をご購入ください。
最初はこの本について長々と書くつもりだったが、予定変更。私が若い頃に旅した時の食体験について書く。
人によって好みはあると思うが、中国、ヴェトナム、タイ、インドは、食の宝庫と言っていい。中国広州の料理店では、ナスの料理だけで2ページもあって度肝を抜かれたし、南インドエローラ石窟群の近くにあるホテルで食べたコース料理(食べ放題)は前菜もメインもデザートも信じられないくらい美味しかった。
だが、世界中を旅していて、最高に美味しかった料理は、エクアドルの首都キトにある料理店のローストビーフとペルーのクスコで泊まった日本人宿で食べた鱒のすし。
キトの料理店は、一見普通の民家。レストランの看板もない。マリファナ好きの日本人と人の良いニュージーランド人と一緒にテーブルに着いた。ローストビーフは金串に刺さった塊の状態でテーブルまで運ばれ、目の前でスライスして提供された。私はその店で生まれて初めて牛肉の本当のうまさを知った。
鱒のすしは、チチカカ湖で取れた鱒を日本人のすし職人が捌いて握ってくれた。世の中で一番好きな食べ物はすしだが、この日本人宿で食べたすし以上に美味いすしを食べたことがない。その時、四人くらい日本人旅行者がいたが、私が一番若く、そのすしを一番たくさん食べた。みんな楽しそうにしていたが、内心、この若いの一人で食べ過ぎじゃないかと思っていたかもしれない。後で食べ過ぎたことを反省した。
南米に行ったのは1989年(平成元年)。翌年にはアジア経由でアフリカに行った。南米は半年しか旅していないが、アフリカは2年くらい放浪した。
アフリカの旅は、一言で言って、しんどい。
かつてバンコクの楽宮ホテルの壁に「金の北米、女の南米、耐えてアフリカ、歴史のアジア、何もないのがヨーロッパ、問題外のオセアニア、豊かな青春、惨めな老後」という落書きがあったらしいが(私も楽宮ホテルに泊まったことがあるが、この落書きは見ていない)、耐えてアフリカは正しい。東アフリカと南部アフリカは他の発展途上国と変わらないが、西アフリカ、中央アフリカ、エチオピア、スーダンの旅は色々な意味でハードだ。
エチオピアの首都アジスアベバで、日の出前に早朝のバスに乗り込み、オレンジを食べたら、口いっぱいに虫の卵が広がった。アフリカでは、暗いところで、フルーツを食べてはならない。エチオピアには生肉(牛肉)を食べる習慣があるが、旅行者は食べない方が無難だろう。
アフリカには、食べるのに勇気がいる料理が他にもある。
ザイール(現コンゴ民主共和国)の貨物船で、船長の奥さんが作ってくれた猿の料理は、臭くて飲み込むのが大変だった。油で揚げて、煮ても、猿の臭いは消えない。猿の肉は美味しいと聞いたこともあるが、ザイールの猿は二度と食べたくない。
アフリカの珍味は猿だけではない。昆虫の幼虫も食べる。私が食べた幼虫は、けっこう大きかった。口に含んで噛むと、生臭い汁が口の中に広がった。吐き出したかったが、その料理をくれた人に悪いので、グイッと飲み込んだ。
旅は、楽しいことと苦しいことがあるから、思い出深いのよ。


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